January 2009アーカイブ

TEXT=岡田 智博   yokohama@creativecluster.jp

メディアアートが有望なビジネスにこれからなる。
このような言葉がこの頃、少しずつ聞かれるようになってきた。

「メディアアートの産業化」そのキーワードは、大阪において市が進めている創造都市づくりにおける重要なコンセプトの一つとして語られ、同時に別のかたちで大阪駅の北口巨大開発(北ヤード)におけるコア施設としてメディアアートのミュージアムとビジネス化のためのラボづくりが2013年にオープンするために準備が進められている。
東では、同じく創造都市というコンセプトを抱える横浜市では映像産業都市として都心臨海部-いつも私たちが「これが横浜」と考え、遊びに行く、港沿いのエリア-を整備し、同じくメディアアートの産業化を狙い、何億円もの予算を投入して映像アートのフェスティバルを開催したり、SIGGRAPHというデジタル映像研究者の国際会議を招致したり、企業や教育機関の誘致(東京藝大の先端的なメディアアートやアニメ、映画の大学院が横浜にあるのはその理由)が行なわれている。

広告業界やデザイン業界といったクリエイティブ業界の現場においても、その可能性がにわかに語られ始めている。
広告業界においては、今までの媒体とは異なるコミュニケーションの手法としてアウトオブホームメディアの概念のもと、応用価値の高い技法として注目されているのだ。メディアアートの中核をなすインタラクティブさは、今や現代人の生活に無くてはならないWEBのみならず、屋外広告といったまさに人と広告が直接コミュニケーションすることで驚かせたり、楽しませたり、便利になるというものから、これからのテレビそのものの在りかたすら変える表現をもたらすかもしれないと期待されている。
デザイン業界においては、インタラクティブなテクノロジーによる技法が入ることで、ディスプレイや建築そのものがメディア化したり、インテリアそのものがインタラクティブなものになったり、デザインの視点から映像そのものの使い方や、見せ方そのものが変わるのではないかと期待されている。

このようにメディアアートは、今までの鑑賞するアートであることから飛び越え、映像とインタラクティブなテクノロジーを中心にわたしたちのライフスタイルを変えるものとして期待され、その変化そのものが新たなビジネスチャンスを生むのではないかと考えられているのである。

また「メディアアートブーム」かよ!

これを読んでいるひとの中には「またか!」と思われる方があるかもしれない。

実はメディアアートに対する期待は大体10年に一度のサイクルでこの業界にもたらされ、実際にはその期待どおりに行かずに終わってしまうまるで「はしか」のようなものなのかもしれない。しかし、その「はしか」は、一度かかった人でも最初は強く「過去にもあったらまたかよ」と免疫を持ちながらも、進行するにつれて「今回は違うかも」と感染してしまう不思議なシンドロームであったりする。
今、まさにその約10年ぶりの大流行が起こり始めようとしている。

メディアアートという流行は常に「これからのビジネスになる」という感覚を伴うものによるものなのだが、実際には大きなビジネスとして成功した試しは無く、それがこの流行を沈静化させる原因となっている。

過去にあった流行をみてみるとこのようなものがある:

1990年代中期 マルチメディア流行感染
パソコンにCD-ROMがついたりして、コンピュータが業務用ではなくライフスタイルに入り始めるという期待のもと、マルチメディアを表現するものとしてメディアアートが大流行した。「ハイパーメディアクリエーター」がまさにハイパーな活躍を見せたのがこの時代であり、今やメディアアートのカリスマである岩井俊雄がアミーガで子ども番組を異次元に送り込み、流行り物好きのおとなたちが徹夜後の就寝時間を延ばしたり、早起きしたり、健康か不健康かわからない状況に追い込んだのもこの時代である。この時代に生まれたのがNTT ICCやアルスエレクトロニカセンター(オーストリア)といったメディアアートのミュージアムである。

1980年代中盤 テクノ・サイバー流行感染
バブルに向かう上り坂のこの時代、誰もが果てしない成長を信じていた(ようとしていた)。科学技術の果てにはドラッグをキメなくても、電極を直接つなぐことでエクスタシーを感じたりする時代になると本気で考え、現状のテクノロジーで無理ならと当時の最先端技術である巨大ビジョンやヘッドマウントディスプレイで何とかキメられないかと模索したのもこの時代である。コンピュータグラフィックスがやっと「子ども騙し」も「大人騙し」もできるようになり、インタラクティブなものが少しずつかたちになったこの時代、何か未来を見せてくれるものとして、ビジネスになるかもしれないものとして、メディアアートが大衆(といってもインフルエンサーレベルであるが)に対して最初に本格的に用いられ始めた。河口洋一郎と坂本龍一が同じカルチャーアイコンであった時代である。

このメディアアート流行感染の波が今、始まろうとしている。
しかし、今までの流行症例をみてわかるように、結局はビジネスにならずに長続きはしていない。しかし、それぞれのテクノロジーの成長の中で確実に、これからなるものをいかなるかたちであれ、作品として見せ、コンテンツになってきたことは確かなのだ。
さて、今回はどのようなかたちとなって行くのだろうか?

今、メディアアートが求められている状況は今までとは違う
違いが分からなければやはりただ感染しただけでしかない

私は今回の流行はなかなか行くのではと考えている。
今までの流行と異なり、実際にニーズや人々が求めている欲求とシンクロし始めているからである。何よりもテクノロジーそのものが、作り手が自由に出来る場に存在していることも大きい。
今までの流行においては、それを制作したり、表現したり、オーサリングするためには、特別な機械やソフトウエア、環境が必要であり、いくら90年代とはいえ、アミーガやマックを手にするためにどれだけの金銭的苦労があったかと考えると、誰もが表現の場に立てるという意味におきて一変している。その上に、よりうならせる表現、これからを感じさせてくれる表現を人々も求めており、その点において、まさにメディアアート的なものが潜在的に渇望されているのである。
その一方で、そのようなメディアやテクノロジーを取り巻く環境を理解せず、やみくもに「メディアアートに可能性がある」「メディアアートがビジネスになる」と考え、取り組むことは、何のためのメディアアートなのかという基本的なコンセプトが欠落するため、ただ単に「メディアアートとして評価されているもの」を集め、「既に評価されている人を集めて何かをこなす」だけの場となってしまい、まさしく人々が伴わない流行だけのものとして終わってしまう危うさを秘めている。

メディアによる創造の未来のスタイルを構想する上で、インタラクティブの次をかたちにするために、メディアアートとそれを担う今のつくり手には、流行だけには終わらない、大きな可能性が存在しているのだ。

メディアアートとビジネスのはざまで

2009年(平成21年) 新春レポート

メディアアートが新たなビジネスを密かに生み出しはじめている。
しかし、その流れの中には、メディアアートそのものの可能性を失わす危惧すら現れている。遂にメディアアートがビジネスに動き始めた中で、その現場で生まれつつある問題点をここで明らかにして行きたい。

文=岡田智博 クリエイティブクラスター理事長
yokohama@creativecluster.jp

メディアアートがなぜ顕在化しないのか?

「何かメディアアートを使ってプロモーションが出来ないか?」このような話が、この頃多く聞かれるようになっている。冬の風物詩として絶大な集客力を実現するイルミネーションを始め、OOH(Out Of Home Media)やデジタルサイネージを中心とする新たな広告手段が急速に広がる中で必要とされる、インスタレーション、すなわちまるでアート作品のようなスペクタクルのある、注目される表現が必要とされている。
まさにメディアアートが必要とされる環境が急激に広がり始めているのだ。
その一方で、実際にはこのような屋外や公共空間でのプロジェクトで、メディアアーティストが採用された話はほとんど聞かれていないのではないのだろうか?
しかし、このような新たな広告やエンタテイメント表現をビジネスにする人々の間では、メディアアートの作品の事例を数多く探し求めるリサーチや、展覧会やフェスティバルへの視察が活発になり始めている。いわばメディアアートが、これら新たな広告や空間づくりのためのネタもとになりつつあるのだ。そしてメディアアーティストをスルーして、メディアアートらしき表現が広がり始めている。

メディアアートはパクリのライブラリーか?

例えば、このようなことがある。
企画の参考になりそうな、ネタとなるアーティストに接触し、インタビューをし、その手法をそのまま表現に使ってしまうこと。それどころか、プレゼンまで出してもらったのに、プレゼンの結果をうやむやにした上で、全く類似の表現を使ってしまうことまであったりする。
ある今年の日本における主要なイルミネーションプロジェクトにおいて、まさに普通の人々にまで感動を起こしてきたイルミネーションベースのメディアアートの作品がそのまま作者に関係無く使われてしまったことも実際あったということだ。

Lazer Tag at 2008年の「ヨコハマEIZONE」においてGRLの認定のもと実施された「レーザータグ」また、ニューヨークを拠点に活動するテクノロジーアートグループ「グラフィティリサーチラボ」(GRL) による、レーザー光線で屋外にメッセージを描く「レーザータグ」は、日本におけるストリートカルチャーが好まれるという特殊事情からか、非営利でのデモンストレーションでのみそのノウハウを公開しているにも関わらず、人集めやハプニングのための広告ビジネスの用途として、無断活用どころかパクリが続発しており、何がオリジナルで何がフォロワーで模倣なのか分からないような野放図な状況に置かれている。

※写真は「横浜国際映像祭」に先立って、GRLの認定のもと実施された「ヨコハマEIZONE」でのレーザータグ。「横浜国際映像祭」と「ヨコハマEIZONE」は横浜市が実施している「創造都市政策」的にはつながっているが、全く人材は繋がっていないメディアイベントである。GRL は「横浜国際映像祭」の招待作家に決定している。

優秀なメディアアートの作品の多くは、実現するためにアーティストが独自の技術を開発するため、インスパイア、もとい、模倣をしたくとも実現へのアプローチが難しいものが多い、そのため、メディアアートがそのまま広告やスペクタクルに結びつくことがあまり無かった。そのようなスペクタクルをしたくとも、多くのアーティストにとっては技術面でのコストが高かったり、コスト面を乗り越えて実現したものはまさに高価なスペクタクルであり、ビジネスへの転用が難しかったのであるが、メディアテクノロジーとデバイスの普及とコストの低減によってアーティスト自身によってスペクタクルを簡単に生み出されることが可能になった今、密かなネタもととして「狙われる」ようになったのである。
常に新たな企画と驚きと感動が求められる、広告やスペースビジネスにおいて、メディアアートはネタ元でしかなく、そのネタは隠しておいたほうがいいのかもしれない。だからこそ、メディアアート的な表現を求め、急激に活用されながらも、実際にはメディアアートが実際のものとしてブームとなり、広がることが無いのであろう。
しかし、そのことは得策であるのだろうか?

もっとメディアアートが知られるようにしなければならない

デジタルテクノロジーが社会や生活の中心により一層、コミットする中で、これらから生まれるものごとを逸早く魅力的なものにするメディアアートという存在はより必要なものになる。そのようにより用いてゆかなければならないものを密かな存在とし、目立たないように押し込めてゆくことははたして得策であろうか。
目立たない存在である以上、活動できる場所は限られ、表現における量的なものが制限されてしまう。よりメディアアートをリソースとして求めるなら、もっと量的に活動が目立つようにしなければならないのではないだろうか。量的な広がりは、表現の種類を増やし、活動できるアーティストの数を増やす、そこから生まれたクリエイティブを巡る多様さは、よりメディアアートをより魅力的なものへと発展させることになるだろう。
魅力的なものへの量的かつ質的な発展は、メディアアートをビジネスに用いたい人々にもより魅力的な選択肢をもたらしてくれるとともに、顧客や消費者の理解や関心へと変わり、ビジネスを活性化することになる。
メディアアートをつくる側、広げる側も、このチャンスとその裏腹にある危機をより認識すべきであろう。今、まさに注目され、活動の幅を広げているメディアアーティストに共通するのは、創りだす作品や作業を積極的に様々なジャンルやビジネスに近い人々に伝達する努力を厭わない人々であること。今までのメディアアートとその周辺にある閉じがちな世界から、メディアアートの魅力を求めているであろう、今を生きるより多くの人々に感動してもらえるための努力が、メディアアートがこれからも発展し、生き続けるために求められているのではないのだろうか。

だからとって安易にメディアアートを使えばいいというわけでもない

だからといって、今目の前にあるメディアアートをそのまま使えばいいというわけではない。メディアアートをビジネスに使う、地域づくりに使うという動きにおいて、深く探さないでフィーチャーしたプロジェクトが多々見られる状況が続いている。これは、ネタ探しと同じように安直なこと。いずれにしても、メディアアートに触れる機会が少ないままに、メディアアート的なものが多く生み出される状況は、悪貨が良貨を駆逐するかのように残念でほかならない状況なのだ。
メディアアートに魅力を感じ、表現し、広げたいと、思う私たちや本誌の多くの読者のみなさんにとって、本当に魅力的なメディアアートとその市場を広げるために、より多くの優良なメディアアートをこのようなメディアアートを求める人々にいかに知ってもらい、適切なかたちで活用してもらえるかということが、今、まさにメディアアートが大いに広がりつつあるチャンスの中で本当の発展のために取り組まなければならないことなのである。

◇ この記事に関連して以下のレポートが筆者より著されています
「メディアアートとアートマーケット : 2009年の東京アートマーケットシーズンから考える」
http://creativecluster.jp/2009/05/tokyo-media-art-market-2009.html

Organization Plofile

Name
Creative Cluster NPO

Establish
January 2002

Web Site
http:.//creativeclutser.jp

Headquarters
ZAIM-Honkan Blg, 34 Nihon-oh-dori, Naka-ku, Yokohama 231-0021 JAPAN

Voice & FAX
+81-50-2404-3359

e-mail
yokohama@creativecluster.jp

Branchs
Kyoto, Tokyo

Director
OKADA Tomohiro
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