成長を続けるデジタルサイネージの世界。その成長は、ディスプレイのリプレイスメントにとどまらない、アートとしてのクオリティで語られるような「メディアアート広告」とでもいえるような、新たなクリエイティビティを生み出し、多様な姿で都市の中において出現しようとしている。このような様々なかたちのデジタルサイネージの登場は、様々な人が異なるデジタルサイネージの定義やイメージを持っているかのような状況を生み出しつつあり、そのような活発な創造性のあるアイディアや試みが、よりデジタルサイネージのシーンを熱くすることであろう。
2008年8月6日まで横浜で開催される「エレクトリカルファンタジスタ」(http://fantasista.creativecluster.jp/)では、この新たなシーンに足を踏み入れた、イノベーティブな作家でありプロダクションである存在から、バスキュール、WOW、チームラボをフィーチャーし、その最新作を実際にアートワークとして投げかけている。
TEXT= 岡田智博
広告は四媒体から「サイバーアド」にシフトしている
このようなデジタルサイネージに対する、クリエイティブ側の高い期待は、現状の日本における広告ビジネスの構造の変化の波と大きくシンクロしているように思われる。
新聞・雑誌・ラジオ・テレビといった既存のマスメディアにおける「四媒体」といわれる主要な広告メディアにおける広告売上高が、昨年あたりより一方的な落ち込みを見せるようになる一方で、WEBを中心とするインターネット広告の売り上げのみが二桁成長を続けている。斜陽の既存マスメディアの一方で、取って代わる勢いで成長をみせるオンライン広告において、広告プロダクションの役割がかわりつつある。2008年6月にフランスで行なわれた世界最高峰のアドフェスティバル「カンヌ国際広告祭」におけるサイバー広告部門の最高賞をプロジェクターが、ユニクロのインタラクティブキャンペーン「UNIQLOCK」(www.uniqlo.jp/uniqlock/)で受賞したほか、トップの賞をバスキュールなど日本のインタラクティブプロダクションが総なめにする快挙が現出した。ここにある快挙は、そのクリエイティブだけでなく、受賞者の主役が広告代理店ではなく、つくり手であるプロダクションに向けられているということである。
インタラクティブ広告は、サイバースペースという広大な世界の中において、クリエイティビティを武器に広告価値を競い合うものであり、最初から広告枠が決定され、その枠の中での表現を広告代理店が提案し、プロダクションに作らせるという構造がもはや成り立たなくなり始めようとしている。すなわち「続きはWEBで」といっても、その続きのWEBの出来が秀逸でなければ、検索されてもネット上において評判が高いものでなければ生き残れない広告、そのかわりクリエイティビティが秀逸なら、より多くの時間、広告に触れてもらい、そして評判によってより多くの人々が広告に集うという現象が一方では起きるのである。このようなクリエイティビティが、生存価値を規定する環境において、クリエイティブにおける広告代理店とプロダクションの関係が対等、もしくは逆転する状況が生まれているのである。それが顕著に現れたのが、今年のカンヌにおけるプロダクションが主となった受賞発表なのである。
既にこのような力のあるインタラクティブプロダクションに対して、ときには広告代理店を通さずにクライアント企業が予算を託し、全面的にオンラインでの広告を担わせるような状況も生まれ始めている。
「UNIQLOCK」 (参考資料)
「サイバーアド」の担い手はメディアアートにおける秀逸な人材でもある
そう、エレクトリカルファンタジスタだ。
このような状況がデジタルサイネージの成長にどのような刺激を与えるかと問われると、それは大いに影響を与えるものであることが確かなのである。
これらインタラクティブアドにおけるクリエーションは、いかにユーザーが広告サイトにおいて情報を入力し、操作し、体験するかという、まさにソフトウエア上での体験こそがコンテンツである。そのことは、そのまま、キーボードやマウスをセンサーに置き換えたり、携帯電話をコントローラーにしたり、都市のあらゆる挙動を入力系にしてサイネージ上で表出させることが出来るということである。
これらのプロダクションにおけるクリエイティブな人材は、グラフィックなどの画像映像表現に秀でているだけでなく、プログラミングやネットワークに秀でた存在でもあり、表現と情報処理の両方を収めるメディアアートや情報デザインの教育をバックグラウンドに置いた人材なのだ。すなわち、メディアアーティストの素養を持った人材が、WEBの広告にイノベーションを起こしているのである。それはそのまま、都市の中におけるインタラクティブな関係を現出させられる可能性を持ったデジタルサイネージのフィールドにクリエイティビティの発露を求めることが出来るのである。

チームラボによるジャパンブランド国際PRのための3D高精細水墨画アニメによる映像ディスプレイ。最終的には壁面を全て高精細な映像世界で埋めることで広告としてのメッセージを情感とともに包み込むことを目標としている。(出展作品ではありません)
クロスオーバーかつ最新作を体験できるキュレーティングは
世界の中でもこの夏は「エレクトリカルファンタジスタ」だけ
これらインタラクティブアドにおけるプロダクションは、デジタルサイネージのフィールドに向けて、様々なかたちで胎動を始めている。ファッションブランドのディスプレイにおいてインタラクティブな映像によるインスタレーションが様々な場所で生まれ始めているのはそのひとつのケースである。また、これらのプロダクションの創造性を顧客に表現するとともに、プロダクションの存在意義を表出させる手段として、独自に制作するアートワークにおいてデジタルサイネージに向けた試みとしてインスタレーションが、様々なかたちで見られるようになってきた。
このメディアアート展「エレクトリカルファンタジスタ2008」(http://fantasista.creativecluster.jp/)においても、メディアアートの作品としてバスキュール(http://www.bascule.co.jp/)が携帯電話操作によるプレイフルなデジタルサイネージのテストモデルを披露したり、チームラボ(http://www.team-lab.com/)が同じくインタラクティブアートを通じた実験的な作品、そしてWOW(http://www.w0w.co.jp/)によるメディアアートによるグラフィック表現の感動を突き詰めた新作を披露する。
このようなわくわくするような、デジタルサイネージのクリエイティブイノベーションを体験するため、あとは都市の中のアドのフィールドが開かれるだけなのだ。
